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インタビュアー 佐藤 満(トライ)

 小学生の理科離れが話題になり、世界的な調査でも日本の子供たちの学力低下が問題視されるようになっている昨今ですが、理科の勉強の楽しさを紹介し、多くの児童生徒が興味を持てるような内容に編集した月刊誌『RikaTan』(星の環会発行)が今年(2007年)4月に創刊され、理科教育の活性化に向けて一石を投じているので紹介します。
去る11月、トライ本社に編集長の同志社女子大学教授左巻健男先生と星の環会の栗山佑子代表が来社され、創刊の経緯や編集の苦労、理科教育への情熱を話してくださいました。
今号では対談の一部をご紹介します。
トライ 『RikaTan』創刊のきっかけを教えて下さい。
左巻 今の理科教育は学校の中で閉じている。学校の中で役立つだけ。本当は生活の中で役立つ勉強をしているはずなのにそのように生かされていない。生活に活用できる理科の指導をして欲しいという願いで創刊しました。
トライ 生活に直結する理科の学習ですね。
左巻 そうです。学校で受けた理科の指導内容が家庭の夕食の会話にならなければならない。
生活とリンクしたものにならなければならない。理科本来の勉強とはそのような姿だと思うし、欧米では暮らしに密着したものとして理科学習は扱われているのです。
トライ 毎月の特集テーマはどのようにして決めるのですか?
左巻 私が考えています。最初に考えたテーマを150名以上いる企画委員とネットでメール交換して決定し、月1回の委員会で内容を充実させて行くのです。
トライ 企画委員とはどのような方々で構成されているのですか?
左巻 私が代表を務めている「新理科教育研究フォーラム」のメーリングリストに登録している1100人に呼びかけて協力してもらっています。学校の先生だけでなく、主婦や予備校の講師など幅広い人脈です。執筆者には、お天気博士の倉嶋厚さんにも協力いただいています。
トライ 『RikaTan』という雑誌の名称は「理科の探検」という意味だそうですが、内容を拝見すると子供には難しいように思いますが。
左巻 相当賢い子供さんなら充分読めるでしょう。私の考えでは「大人の理科遊び雑誌」という感覚で楽しんで作っています。理科教育を変えていくのには、まず大人を変えたい。
理科好きな大人や理科に興味を持つ大人に読ませたい。理科好きが増えて子供と生活の中で理科を学んで欲しい。そう思っていたところ、本当に良いものを作ろうとしている星の環会から月刊で発行する運びになったのです。
トライ 現在の理科教育の問題点は始めにも伺いましたが。
左巻 現行の指導要領での中学校理科の履修単位数は、中学3年生が最も少ないのですが、植物も動物も基本的な分類の一部しか学習しないのです。高校でも物理・化学・生物・地学の4科目すべてを履修しなくてもよい。これでは理科離れが起きるのも当然でしょう。学校での理科教育の失敗は、点数は高いが意欲が低い子供たちが育ってしまうことです。丸覚えしてテストで答えられればそれで終わり。テストが終わって出題範囲でなくなれば忘れてしまう。
私の願いは生活にリンクする理科学習として、子供たちが主体的な学習をして、生きる基盤に結びつけるようになって欲しいのです。
トライ なるほど。「理科は難しい」と感じさせないようにしたいのですね。
左巻

そうです。本来、理科はおもしろいのです。今の学習内容は、これまでの抽出式全国学力調査の結果で生徒が出来なかった分野を難しいと判定して、削除したり上の学年に先送りしたりしてきてしまったのです。確かに抽象的な内容や計算を伴う分野は大変かも知れませんが、学んで理解できる喜びを最も感じることができる。苦労してわかった事を暮らしの中で「このことだったのか」と気づく。それが理科の学習の本来の姿なのです。

トライ 日本の生徒の理科の実力低下が問題になっているようですが。
左巻 国際的に見れば、落ちてきたとはいえ、一定のレベルは維持していると見えますが、大きな問題は興味や関心、意欲が大変弱いことです。これでは科学技術立国としては心配です。学力上位の一部だけ理科がができればいいのでなく、もっとみんなが科学に興味や関心、意欲をもって、支えなくてはいけない。 全体を引き上げることで理科教育のレベルアップになる。各国でも様々な取り組みをしていて、教育政策の成否が問われるようになってきているところです。
トライ 『RikaTan』の今後は如何でしょう。
左巻 理科関係の雑誌が減ってきた中での創刊で、未だ認知度が低いのですが読んだ人は「おもしろい!」と言ってくれています。だから今後が楽しみです。 これから1年間の特集テーマは考えてありますが、やりながらテーマも手直ししていきます。もっと、理科好きな、あるいは理科好きになりたい大人と子供にも読める記事を増やしていこうと思います。
トライ 今後の計画や夢など、お話しいただけますか?
左巻 色々な検定が流行しているようで、理科検定というのもあるのですが、「科学検定」というのをやってみたいですね。
トライ 今後のご活躍を期待したいと思います。本日はありがとうございました。
 

RikaTan
左巻健男(さまきたけお)

1949年生まれ。同志社女子大学現代社会学部現代こども学科教授。法政大学工学部講師。千葉大学教育学部卒、東京学芸大学大学院修士課程修了。東京大学教育学部附属中学校・高等学校などをへて現職。新理科教育フォーラム代表、『RikaTan』(星の環会)編集長のほか、中学理科、高校物理などの教科書執筆、『水はなんにも知らないよ』(ディスカヴァー携書001)、『左巻健男教授の「理系アタマ」育て塾』(別冊宝島)など著書多数。

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